経済

太陽光発電は得なの?仕組みや費用、メリットデメリットを考える

クリーンなエネルギーである再生可能エネルギー、その代表格とも言えるのが太陽光発電で、注目を集めています。

最近も、東京都の小池百合子知事が温室効果ガスの排出量の削減に向け、

新築住宅への太陽光パネルの設置義務化に伴う経済効果について、

2,000億円以上になるとする試算を明らかにしました。

これから新たに家を建てる方は勿論、既に住宅をお持ちの方も、

自宅に太陽光パネルを設置することが得なのか?デメリットは無いのか?

費用はどれくらいか?など関心が高まっていると思います。

そこで、今回は、この太陽光発電について、その仕組み、家庭に設置する場合の費用、

そして、メリットとデメリットを考えてみましょう。

仕組み

(1)太陽光発電

太陽光発電は、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、

太陽の光エネルギーを太陽電池(半導体素子)により直接電気に変換する発電方法です。

太陽光発電所は「メガソーラー」とも呼ばれています。

(2)家庭に設置

家庭に設置する場合、次の機器が必要になります。

①太陽光パネル(モジュール)

住宅の屋根などによく見かける、黒っぽい板のようなものですね。

「太陽電池パネル」ともいいますが、パネル自体には電気をためる機能はありません。

最も小さい単位をセル、セルをつなげたものをモジュールと呼びます。

モジュールが太陽光を電力に変換するので、モジュールの大きさによって発電できる量が変わります。

②パワーコンディショナー

太陽光パネルで発電される電気は直流電力なのに対し、家庭で使われる電化製品の多くは交流電力で動くため、

発電した電気をそのままでは使えません。

太陽光パネルとつないで、家庭で使う交流電力に変換する機械がパワーコンディショナーです。

③発電モニター

設置した太陽光パネルによる発電量のほか、家庭内で消費している電力、

電力会社への売電電力を表示します。

発電量や故障の有無などを確認するのに必要です。

専用のモニターのほか、表示内容をインターネットなどで確認できるものもあります。

④蓄電池

発電システムに必ず必要というわけではありませんが、自家発電した電気を効率的に使うのに必要です。

蓄電池があれば、昼間に発電した電気を夜間に使ったり、

災害などで停電になっても電気を確保したりすることができ、一般家庭にも普及し始めています。

⑤その他

太陽光パネルを実際に屋根に取り付ける場合にパネルを支える役割をする架台、

それから太陽光パネルで発電した電気を引き込むケーブルや、そのケーブルをまとめる箱が必要になります。

設置費用

1)初期費用

パネルとパワーコンディショナーなどの周辺機器の購入費のほか、

架台の取り付けや配線などの工事費、補助金の申請手続きなどの諸費用がかかります。

メーカーや工事業者などによってそれぞれ価格に幅はありますが、

設置にかかる費用は全体でシステム容量1kwあたり25~40万円程度といわれています。

最適といわれるシステム容量4kW台の太陽光設備を導入する場合

設置費用に100~200万円程度かかることになります。

なお、国の調査では、2019年で1kWあたりの設置費用に平均30.6万円かかったとされています(下表ご参照)。

つまり、4kWのシステムを導入する場合、設置費用の平均は122.4万円となります。

機器、器具等費用
パネル19.5万円
パワーコンディショナー4.5万円
架台2.3万円
工事費6.5万円
その他0.3万円
値引き-2.4万円
合計30.6万円

2)設置後の費用は?

故障などは比較的少ないといわれていますが、パネルに汚れなどが付着すると発電効率が落ちたり

機器に不具合が出たりすることがあります。

設置後は定期点検やメンテナンスが必要です。

定期点検は4年をめどに1回以上するのが望ましいとされ、4~5kWの機器であれば、費用は1回あたり2万円程度で済みます。

但し、太陽光パネル、パワーコンディショナーは20年前後で交換が必要とされ、

修理や買い換えに、パネルは1kWあたり30~35万円、パワーコンディショナーで10~20万円程度かかるといわれます。

もっとも、太陽光発電の普及で機器の価格は下がる傾向にありますので、20年後はもっと安くなっているかもしれません。

メリット

このような費用が掛かりますが、メリットはどんなことでしょう。

(1)電気代が安くなり、余った電気は買ってもらえる

昼間に使う電力を太陽光発電だけでまかなえれば、その分の電気代はかかりません。

消費する以上に発電量が多い場合は、余った電気を電力会社に買い取ってもらえます。

逆に、使われる電気の方が多い場合は、不足分を電力会社から買うことになりますが、

手続きは自動制御され、そのつど操作する必要はありません。

(2)災害時の備えにも

大規模な災害ともなれば、停電が長期化する恐れもありますね。

自宅の屋根などで太陽光発電をしていれば、災害で停電になっても自家製の電力が頼りになります。

より現実的な対策としては、発電した電気をためておく蓄電池も必要になりますが、

自家製の電気が確保できていれば、緊急時も安心ですね。

(3)エネルギー政策への貢献

A.安定したエネルギー源

少し古いですが、2017年の日本のエネルギー自給率は9.6%にすぎません。

国内で消費されるエネルギーの大半は海外からの輸入に頼っているのが現状です。

電気をつくる燃料は石炭、石油、天然ガスが8割以上を占め、

産油国の多い中東地域などで政情が不安定化すると、輸入が止まってしまう恐れもあります。

太陽光発電なら長期にわたって安定的に電力を確保でき、国内で使われる電力を国産でまかなうことができます。

B.温暖化対策に効果

火力発電のように空気を汚すことはなく、モジュール周辺でも騒音も出ません。

太陽光発電は設置者に利益をもたらすことはもちろん、

持続可能な社会をめざすという地球規模の課題にも貢献できるのです。

デメリット

勿論、良い面があれば、悪い面もあります。

(1)初期費用が高い

やはり一番の問題はこれでしょう。

パネルや架台などの資材や工事費用などで、比較的小規模な住宅用でも、

設置費用は100万~200万円かかるといわれます。

さらに蓄電池などを取り付けるとトータルで200万~400万円が必要で、

設置のハードルがやや高いのが現状です。

ただ、パネルや蓄電池の設置には国や都道府県の補助制度もありますので、予想以上に安くできる可能性もあります。

(2)思わぬ破損

設置されるのが屋外のため、強風で飛ばされたごみなどがぶつかることがあります。

パネルの破損やゆがみが原因で発電効率が落ちたり、パネル周辺から漏電や出火したりする可能性もあり、注意が必要です。

(3)買取を拒否されるケースも

電気は常に需要と供給のバランスをとる必要があるため、需要が低いのに太陽光などの発電量が大きい時は、

電力会社が送電を受け入れない(出力抑制)ことがあります。

(4)天候・時間帯が発電量を左右

そして、自然です。日没後はもちろん発電できませんし、曇りや雨の日は発電量がガクッと落ちることもあります。

気温が高すぎても発電効率が下がることもあります。

年間を通してみれば一定の発電量はありますが、時期によって大きな差が出るのは避けられません。

比較的平坦な地形の欧米に比べると、山間部や積雪地域も多い日本では、年間を通して太陽光発電に適した場所は限られてきます。

まとめ

高額な初期費用への対策の一つとして、自治体の補助制度の活用があります。

冒頭に挙げた東京都の施策の他、設置費用の一部を補助することを通して再生可能エネルギーの普及を支援している自治体があります。

但し、全ての都道府県や市区町村で助成を行っているわけではありません。

助成が終了している場合もあるので、お住まいの自治体の状況を調べてみることが大切です。

そして、世界では太陽光発電の普及が進むことで資材などが値下がりし、

発電コストが下がることでさらに普及が進むという好循環が生まれています。

ヨーロッパなどでは、火力発電所などで発電された電力と競い合うほど太陽光発電のコストが下がった国もあります。

日本でも普及が進むことで初期費用が下がり、ますます設置が進む傾向にあるといっていいでしょう。

ニュースなどで状況を注視していきましょう。

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