「孫の教育資金を用意してあげたいんだ」、
「私が死んだ時は、このグランドピアノをあげるから、いつまでも大事にしてね」
こういう話はよく耳にしますね。
これってどちらも「贈与」ってことになりますが、しかし、「贈与すると、税金がかかるんでしょう?」
と聞かれると、「うーん・・詳しくは分からないな」となる方が多いのではと思います。
そこで、今回はこの「贈与税」について、
その贈与の形態から、税金がどうなるのかについて、少し勉強してみたいと思います。
贈与とは?
贈与について、民法第549条に、
「ある財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がそれに受諾することによって成り立つ片務・諾成・無償の契約である」
と規定されています。
簡単に言い直せば、自分の財産を無償で与えることです。
しかし、一方的に財産をあげるだけで贈与が成立するわけではありません。
財産を受け取る側が承諾の意思を表明することで初めて贈与が成立します。
なお、贈与契約は民法上口頭で成立します。
ただし、口頭のみの贈与契約は完了していない部分に関して撤回することが可能です。
一方、文書で贈与契約をしていた場合は贈与の途中で契約を撤回することはできません。
贈与の形態
それでは、冒頭にお話しした、よく聞く話を踏まえ、贈与の形態について整理してみましょう。
定期贈与
毎年100万円を10年間贈与するなど、定期的に一定額を贈与することです。
父親が子供たちを集め、「兄弟が多いから、後でもめないよう に、毎年、100万円づつ渡すから」
こんな話を聞いたことがあると思いますが、これは定期贈与に分類されます。
後で取り上げる生前贈与とは規則性の点で異なります。
負担付き贈与
贈与をする代わりに財産を譲り受ける人に一定の負担をさせること。
例えば土地と建物を贈与する代わりに1,000万円のローンも負担させるようなケースです。
これもよくあるケースですが、仮に負担を追わない場合は、財産を贈与する側は贈与契約を解除することができます。
死因贈与
「自分に万が一のことがあったときに、財産を渡す」など、自身が亡くなることで初めて発生する贈与のこと。
冒頭に挙げた、グランドピアノの贈与のケースで、生前に契約によって財産を渡す相手を決めている点が特徴です。
これに似ているものとして、「相続」と「遺贈」があります。
相続の場合は、生前に財産を渡す相手を決めていません。
また、「遺贈」は生前に遺言で財産を渡す相手を決めている場合をいいます。
生前贈与
生前に財産を都度、契約に基づいて行う贈与のこと。
一般的に贈与というと、この生前贈与のことを指します。
冒頭に挙げた、「孫の教育資金を用意したい」というケースで、この他にも、
友人に車をあげることも生前贈与に該当します。
先に挙げた定期贈与と異なり、思いついた時など、「都度」行われるのが特徴です。
贈与税って、いくらかかるの?
でも、このような行為に税金はどのくらいかかるのでしょうか?
財産を贈与する場合にかかる贈与税の税率計算方法
基礎控除後の課税価格 | 控除額 | 税率 |
---|---|---|
200万円以下 | ― | 10% |
400万円以下 | 10万円 | 15% |
600万円以下 | 30万円 | 20% |
1,000万円以下 | 90万円 | 30% |
1,500万円以下 | 190万円 | 40% |
3,000万円以下 | 265万円 | 45% |
4,500万円以下 | 415万円 | 50% |
4,500万円超 | 640万円 | 55% |
このように贈与税は贈与する金額が大きくなるほど税率が大きくなります。
この性質を考慮して、生前贈与では、1回にまとめて贈与をするのではなく、
長い期間をかけて徐々に財産移転していくことがポイントになります。
この場合、次の「暦年贈与」が適用されますので、その点をもう少し詳しくみていきましょう。
暦年贈与の活用
暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までに行われた贈与の合計に対して、
贈与税を計算することで、生前贈与に適用されます。
暦年贈与には基礎控除110万円があり、年間の贈与の合計額から110万円を差し引いた残額に、
贈与税率を乗じて贈与税は計算されます。
従って、年間の贈与が110万円以下の場合には贈与税はかかりません。
具体的に言いますと、2020年に100万円、2021年に100万円の贈与が行われた場合にも贈与税はかかりませんが、
2021年にまとめて200万円贈与した場合には、110万円を差し引いた90万円に対して贈与税がかかることになります。
また、110万円は受贈者1人1人に対して毎年あるものです。
父親が兄弟3人に100万円ずつ300万円贈与した場合には、それぞれ基礎控除110万円により贈与税はかかりません。
贈与税率には、特例贈与財産用と一般贈与財産用の2パターン
特例贈与財産用は、祖父母や両親などの直系尊属から、
20歳以上(贈与の年の1月1日時点)の子や孫などへの贈与に使用します。
これ以外には一般贈与財産用を使用します。
暦年贈与と認めてもらうポイント
前記の通り、暦年贈与は節税対策と非常に有効ですが、税務当局に認めてもらうために、以下の3点を押さえておきましょう。
贈与契約書を作成しておく
親族の間の贈与であっても贈与契約書を作成し、贈与する金額やお金を贈与する側ともらう側の署名捺印を残しておきましょう。公証役場で作成しておけば安心です。
記録を残すため、贈与は現金振込みで
贈与のやり取りは銀行振込で行い、贈与した日付や金額の履歴を贈与の証拠として残しておくことが必要です。
定期贈与とみなされないための注意
贈与する金額を毎年異なった金額にするなど、定期贈与と見なされないように、贈与する時期や金額に規則性を持たせないようにしましょう。
まとめ
以上、贈与の形態と贈与税についてみてきましたが、
実際に贈与を行う際には、思わぬ点で税務当局に指導を受けないよう、
税理士などの専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。