先日、テレビのニュースで、この春の入学シーズンを前に、
来年度のランドセル商戦がスタートしたと取り上げられていました。
しかし、このランドセル、なかなか高価で、物価高の最中、さらなる家計への圧迫材料として、
「ランドセルを無料配布します」、「いや廃止だ」と様々な意見が出ているようです。
そこで、ランドセルについて、特徴ある対応をしている自治体を取り上げてみたいと思います。
ランドセルとは
ランドセルの歴史
江戸時代、日本の軍人は装備品として“背嚢(はいのう)”という布製のカバンを使っていました。
それが明治時代に入った頃、軍人が使っていた背嚢は子どもたちが学校に通うための通学カバンとして活躍するようになりました。
これがランドセルの始まりです。
背嚢はオランダ語で“ランセル”と呼ばれており、
それがなまって “ランドセル”と呼ばれるようになったのです。
しかし、その頃のランドセルは高級品とされていて、富裕層の間で用いられることが多かったのですが、
昭和30年代以降の高度経済成長を迎えた頃を境に、全国に普及するようになりました。
便利な点
戦闘中に使われていたことからもわかるように、ランドセルは丈夫で持つ人の動きを妨げない形状になっています。
つまり、よく動き、たまに無茶なことや怪我をしがちな小学生にマッチしたカバンと言えます。
転んでもクッション代わりになる
ランドセルの厚みと耐久性は、アクシデント時にクッション代わりになります。
実際に、交通事故で体が飛ばされたときにランドセルがクッション代わりになり、
軽症で済んだ事例があります。ランドセルは、背中から落ちたときに衝撃を吸収し、
背中から頭がぶつかるのを防ぐ役割があります。
雨に濡れても中身は大丈夫
雨の日、小学生が傘をさしても、濡れてしまうことがありますね。
こんな時、中にしまった教科書はどうでしょう?大丈夫です。
ランドセルは丈夫だから雨に濡れても、中の教科書が濡れることはありません。
傘が上手にさせない低学年の子でも安心できるメリットです。
また、丈夫で、教科書を入れやすい形をしていますから、教科書が型くずれしてしまう心配もなく、活発な小学生も安心です。
こうしたことが評価され、公立、私立の小学校の多くで、
義務化されてはいませんが、ランドセルを推奨しているのでしょう。
問題点は高価なこと
一方で、高価なことが問題となっています。
ランドセル工業会が実施した、2022年4月入学の児童の親を対象にした調査によると、
ランドセルの平均購入額は5万6425円となっています。
また、あるアンケート調査によると、デザインや種類が豊富になったので、
2万円代から10万円代まで価格にはかなりバラつきがあるようです。
1番回答が多かった価格帯は「5~6万円」(32%)、2番目は「6~7万円」(22%)、
次が「4~5万円」(19%)となりました。
この3つを合わせ73%となり、ランドセル工業会の調査と符合しており、中々の高額商品といえます。
そして、これが二人、三人と子供が増えると、家計への負担はかなりのものとなります。
SNSでは「高すぎる」など嘆きの声も聞こえてきます。
ランドセルの無料配布
こうしたことを踏まえ、ランドセルの無料配布を行っている自治体もあります。
茨城県の取り組み
A.2022年7月時点、茨城県は、県内全44市町村のうち15市町がランドセルを無料で配布しています。
B.中でも日立市は1975年(昭和50年)から小学校及び義務教育学校を対象とし、
毎年約1,000個のランドセルを無料で配布しています。
その理由は、やはり、1975年当時、オイルショックの襲来で、
各家庭の経済的負担が大きく、その軽減策として、新一年生へのお祝いとして始めたということです。
大阪府摂津市の取り組み
A.摂津市も、上記の日立市と同様に1975年(昭和50年)から小学校1年生を対象とし、毎年ランドセルを無料で配布しています。
B.その目的も同様で、保護者の負担軽減です。
埼玉県秩父市の取り組み
秩父市は、2022年度に市内の小学校に入学する新1年生全員にランドセルを無料で配布することを決めました。
これは前年4月に行われた市長選で初当選した市長が「子育て支援」として公約に掲げていたものですが、
ランドセル商戦の早期化により、すでに購入したり予約済みの家庭も多いため、
現物ではなく、入学準備祝い金として児童1人当たり5万円を支給することになったそうです。
今後は新1年生に対し、ランドセルを一律で無料配布するか、今回のように現金を助成するかは今後検討するということです。
福井県福井市の取り組み
福井県福井市では、使われなくなったランドセルを集めて必要としている家庭へ無料で譲渡する事業を実施しています。
ランドセルに代えて、他のカバン(リュック等)の無料配布
ランドセルではありませんが、前記と同様に家計負担の軽減策としてリュック等の他のカバンを無料で配布している自治体があります。
富山県立山町の取り組み
富山県立山町では、2023年以降の新入学児童に通学用バックを無料で配布するようです。
舟橋町長は「高額で家計への負担も大きいランドセルを町から贈りたい」との思いから、
公募で選ばれたアウトドアブランド「モンベル」が軽量で機能的な通学用リュックサックを開発し、それを配布するとのことです。
山口県防府市の取り組み
山口県防府市は、2023年春に小学校入学する全1年生に対して、 軽くてコンパクトな通学用のかばんを支給することとしたそうです。
まとめ
ランドセルの現物支給や購入補助については、ご紹介した自治体の事例にある通り、
家計負担を軽減する意味では評価される一方で、
「子どもや家庭から通学かばんを選ぶ権利を奪う可能性がある」とか、
「特定業者に公金を投入する独占状況を生む」等の議論もあるようです。
また、ランドセルに代わるリュックのようかカバンを普及させる動きもあり、この問題はまだまだ方向が定まらないようです。