ボランティア活動というと、「スーパーボランティア」という言葉に代表されるように、
被災地応援が頭に浮かぶと思いますが、
身近にある「自治会」、「町内会」については、ボランティア活動というよりも、
「面倒くせえ組織だ」って、思われている方が少なくないと思います。
そこで、今回は、その位置づけ、歴史、課題などについて、お話させて頂きます。
「自治会」、「町内会」の位置づけ~重要な「共助」の担い手
自治会・町内会は、下図の通り、国、都道府県、市区町村の各行政機関と連携し、
地域に住まわれる方々の暮らしを支援するための「共助」としての重要な位置づけにあります。
でも、どうして、私たちは共助組織である、「自治会」、「町内会」と
関わらなくちゃいけないのかな?と疑問が湧いてきますよね。
それについて、「周囲との繋がり」という観点から考えてみましょう。
周囲との繋がり
人は生きていく上で、様々繋がりがありますが、簡単に分類すると、下図の4つにまとめられます。
家族の繋がり
楽しい時も、悲しい時も、嬉しい時も、辛い時も、気持ちを分かち合い、悩みを打ち明け、相談できる存在です。
仕事の繋がり
生活の糧を得る、自分を高める、等、目的は人により様々ですが、1日のかなりの時間を過ごす場所です。
地域との繋がり
「おはようございます」、「いってらっしゃい」等の挨拶で始まり、
清掃活動、災害避難訓練、それに共同募金など、
濃淡はありますが、共に助け合って生きる、「共生、共助」の世界です。
公的機関との繋がり
人生の各種ライフステージ(出産、入学、結婚、死亡等)、
イベント(転居、退職、税務申告、最近では予防接種等)において
関わりがあるものです。「公助」もここに含まれます。
「自治会」、「町内会」の具体的な役割
上図にあるように、大きく捉えて、
①交通安全、防犯活動、②環境美化活動、③防災活動、
④子育て支援、⑤福祉活動、⑥親睦活動、⑦情報伝達、収集、
の7つの活動が主な役割です。
「自治会」、「町内会」の歴史
始まりは第二次世界大戦前
1937年の日中戦争の頃から日本各地で組織され始め、
大政翼賛会下の1940年9月11日内務省訓令第17号「部落会町内会等整備要領」により
国により正式に、「町内会」が整備されることとなりました。
また、従属組織として10戸前後を単位として隣保班(隣 組)も設置されることになりました。
「とんとんとんからりと隣組🎶」で始まる「隣組」とい う歌を聴いたことはありませんか? これは1940年6月に初放送された戦時歌謡です。 歌詞の中に、「格子を開ければ 顔なじみ/廻して頂戴 回 覧板/知らせられたり 知らせたり」と当時の家屋の状況や、町内会の役割が組み込まれています。
戦後は一時廃止されたが、後に復活
戦後は、民主化により、1947年5月3日いわゆるポツダム 政令15号が公布され、
「町内会」「部落会」やそれらの「連合会」等の結成が禁止されることになりましたが、
サンフランシスコ講和条約の発効に伴い制定された
「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律」(昭和27年法律第81号)により、
上記政令を含めたポツダム命令は講和条約発効半年後の
1952年10月25日に失効したため、自治組織として再組織化されるようになりました。
高度経済成長期に役割が増大
高度成長期、社会インフラがまだまだ整わず、
役所の手が回らないことには、世の中として、
自治会・町内会等は各地域における「共に生きる~共生」の自発的な実施主体と位置付けられ、
ごみ集積所の管理、交通安全活動、防犯見回り、清掃緑化活動など
各種の生活改良活動を直接的に担うことになり、
昭和期の地域の生活改善に大きく貢献しました。
その一方で、社会インフラが充実してきた昭和後期から平成期では、
そのまま義務的、慣例的に続けられる活動に対し、
「役所の仕事ではないか。何で私たちがしなくてはいけないの?」
という声がだんだん多くなり、それと同時に、
自治会・町内会等の活動の担い手が減少し、
「そんなになんかできないよ」こととなって、
自治会・町内会等の疲弊をもたらすこととなってきました。
「自治会」、「町内会」の抱える問題点
加入率の低下
なんと言っても、自治会、町内会等への加入率の低下です。
具体的な数字を見ますと、1968年に内閣府が行った「住民自治組織に関する世論調査」では、
自治会、町内会等への加入率は市部で88.7%、町村部では90.5%でしたが、
およそ半世紀後の2010年の「国民生活選好度調査」では、
全体で73.0%まで低下しています。
理由は様々ですが、新たに転居されてきた方に勧誘に行くと、
「何で加入しなくちゃいけないんですか?」と素朴に聞かれます。
「地域活動として、皆さんに加わって頂き」と切り出しても、
法的な義務がないことから、「いえ、うちは結構です」となると、
それ以上、加入をお願い出来なくなります。
また、「うちは夫婦ともに働いていて、昼間いないから、地域の活動といっても関係ないから」と
断る方もいらっしゃいます。
住民の高齢化等により、活動者が減少
これも、大きな問題で、活動参加を呼び掛けても、
「ご苦労様 ですね。でも、うちは夫婦共々、75歳を超えで、無理なんですよ」
と言われることが少なくありません。
実質的に、加入者減少となってしまいます。
負担が大きすぎ、役割を担いきれない
前記3で「高度経済成長期、役所の手が回らないことには、
世の中として、自治会・町内会等は「各地域における「共に生きる~共生」の
自発的な実施主体と位置付け」と書きましたが、
これら行政から委託される役割となったものが、
昭和後期、平成、令和と増大し、上記の「加入率の低下」、「高齢化」により、
担うのが困難、もっと言えば、担えない状況となっています。
まとめ
地域社会はマンションのように区分所有している運命共同体ではないので、
従前の「共生社会」ということに限界があります。
従って、前記に上げた「加入率を増やす」ということも必要ですが、
高齢化で活動できる人も増えないという実態を考えれば、
行政とともに、「共助」の担い手である、
自治会・町内会に期待される役割を見直していくことがとても重要な課題と思われます。